きょうのクロスステッチ
【きょうのクロスステッチ Vol. 752】 by 岡村恭子
VOL.752 デンマークの暮らし ふとした時に蘇る懐かしい思い出
tirsdag den. 17 juni 2025
●1980年台の夏の思い出
煉瓦造りの4階建てアパートの2階、狭いけれど南側に小さなベランダ、
そこに括りつけのテーブルとIKEAで買った白い椅子、プランターに植えた花が揺れる。
ベランダでのんびりしていると下を通る住人たちが手を振って挨拶してゆく。
夕方、キッチンでコロッケを作っていると階段を上がってくる音、
開け放ったままの玄関ドアから「父さん来ている?」ジミーが顔をのぞかせる。
「今日はまだ」と言いながら出来立てのコロッケを一つキッチンペーパーに
包んで手渡すと、熱々を頬張り後ろ手に手を振りながら階段を降りて行った。
その明るい足音。
夏のコペンハーゲンはカラリとした空気の中で様々な音が明るく響く。
日本から来たばかりの私には、そんな些細なことまで楽しいのでした。
私のデンマークでの生活が気取りのない住人たちに囲まれてスタートしたことは
本当に幸運だったと思っています。
●ヨアンとリスの思い出。
コロッケを頬張っていた少年ジミーの両親がヨアンとリスです。
ヨアンは家人にとって本当に気のおけない親友でした。
奥さんのリスはデンマークに不慣れだった私をスーパーに連れ出して
商品の内容を手振り身振りで教えてくれたり、
デンマーク料理の作り方を教えてくれたのも彼女、
我が家のクリスマスの献立は今も彼女のレシピに従って作っています。
1週間に一回、夕食後のひと時を女友達と過ごすという集まりに誘って
くれたのもリスでした。気さくでおしゃべり好きなメンバーに加わって
日本から来たばかりで言葉など通じなかったはずなのに、
一緒になって笑い、不思議なくらい理解できたような気がする。
彼女たちとのおしゃべりは楽しいだけでなく、新参者の私にとって
デンマークの日常的文化を学ぶまたと無い良い機会になったのでした。
夏の日差しが明るい午後、ヨアンが所有する船が停泊しているハーバーまで
自転車で向かう。頭上をカモメが飛んで行く。
年季の入ったマホガニー製で小さいキッチンとベッドもある素敵な船でした。
沖に停泊して魚釣りの糸を垂らして珈琲ブレイク。
そんな時、波に揺られてのんびりしている自分をもう一人の自分が
「どうしてそこにいるの?」と訝しそうにしている気がした、懐かしいあの頃…。
やがて、ヨアンがこの世を去り、他のメンバーも散り散りになり、
掛け替えのない懐かしい思い出だけが今も心に残っています。
そして、気付けば人生の半分以上がデンマークの暮らしとなりました。
●笑って暮らせる幸せ。
夏らしいお天気に恵まれた週末、少し早めの誕生日というわけで、
庭でBBQをすることになりました。
手際よくテーブルの準備をする娘の様子を見ながら
まだ母が元気だった頃、彼女の代わりに台所に立つ私の傍で
「いつの間にか世代交代ね」と言った母の笑顔に今の自分が重なるようです。
家族と一緒に笑って誕生日を迎えられる幸せを思った一日でした。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/

只今BBQ準備中!


誕生日の必須アイテム。
風で消される前に急いでロウソクをフ〜しましょう。

プレゼントの豪華なバラと素朴な庭のバラ。
どちらも美しい。


今日の庭から
サーモンオレンジのカプリフォリと
白い野薔薇が花盛りです。




