2012年1月~3月

【きょうのクロスステッチ Vol. 132】 by 岡村恭子


VOL.132 二人のプリンスが来た日。

torsdag den. 30 marts 2012

朝の珈琲を飲みながら何気なく広げた新聞記事に目が止まりました。
なになに?…
イギリスのプリンスチャールズが我が町にやって来て、私が毎日のように
買い物に行くスーパーマーケットに隣接する団地を訪問する?!
「?」と「!」マークが頭の中を飛び交いつつ読むと、デンマークの
王位継承プリンスフレデリックがイギリスからのお客さまを
案内する訪問先のひとつとして、ここをご自身で選ばれたのだそうです。
他にも訪問すべき場所はたくさん有りそうですが、理由はともかく、
空は青く晴れ渡り、またとないお日和です。
野次馬的好奇心も手伝って歓迎の人達に混ざってみることにしました。
周辺は手に手に歓迎の小旗を持った人達で歓迎モードです。
警備の警官が子供達とおしゃべりしています。コペンハーゲン知事さんも
住民と立ち話です。そうしているうちに僅か2台のパトカーに先導されて
お客様到着。みんな旗をパタパタしながら笑顔でお出迎え。
実にラフな雰囲気でした。

この団地は老朽化に伴い数年前からリノベーションがスタートして、
かれこれ4年経ちます。現在もまだ進行形ですが工事が進むに連れて
以前の廃れていた印象から一皮ずつ剥がれるように明るく変化し、
今ではすっかり快適な住宅環境が整った印象です。
敷地内には低層の集合住宅の他に高齢者ホーム、幼稚園などが
上手く配置されていて、ひとつのコミュニティーとして成り立つよう
配慮されています。囲いの無い芝生と緩やかにカーブを描いた歩道などで
建物同士がとけ込む様にレイアウトされていて、とても開放的な雰囲気です。
屋根上から草花が育つようにし、エコソリューションの取り組みを
アピールしている点もいかにもデンマーク、という感じです。
…と、ここまで書いて来て、我ながら詳しいこと、と感心します。
何しろ買い物に行く度に工事現場が目に入り、興味深く観察しているので
状況に詳しいのです。
幼稚園の屋根も夏には草花の帽子を冠った様になるのかしら?なんて
今から楽しみにしているのです。

デンマークでは老朽化した建築物でも、むやみに壊して新しく建て替えず、
リノベーションをして再利用するよう努めます。そして、古い建造物を
保存しながら良い点は残しつつ、新しい息吹を吹き込んで蘇らせる方法や
知恵を寄せ合い技術を開発してきました。そうした長年の建築的技術と
創意工夫が今回の団地にも発揮されています。
揺れる小旗を遠目に見ながら、イギリスからのお客様もそんな事を感じ取って
下さったら嬉しいな、と思いました。

岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
http://copensmile.exblog.jp/


歓迎の旗を持ってプリンスを出迎える高齢者ホームの人達。

何やら談笑するプリンスチャールズとプリンスフレデリック。

幼稚園児達はお伽噺のプリンスとは違い、ただの?オジイさんでガッカリしたかも知れませんネ。

我が家の庭から。プラムの木の根元が薄紫の小さな花盛りです。


【きょうのクロスステッチ Vol. 131】 by 岡村恭子


VOL.131 合理的な自己申告システム

torsdag den. 22 marts 2012

日曜日(25日)から夏時間、時計の針を1時間早回しです。
お待ちかねの明るい季節が巡ってきました。
さあ、冬時間にサヨナラしたら夏時間に合わせて ハヤオキ ハヤオキ!

デンマークでは暖房、電気、水道の使用量は毎年一回まとめて
自己申告するシステムです。今年もその時期がやってきましたが、
通知が来たらメーターをチェックし、インターネットまたは電話で数字を
打ち込むだけ。とても簡単便利です。
手続きの簡素化で人件費削減、膨大な用紙節約、郵便料金などの諸経費削減、
良い事ずくめですが、しかし、「自己申告」というのはまず相手を信用する
ことで初めて成り立つわけですから、そういう点で、この国は大人なのかも
知れません。
そういえば…、と思い当たったのが、日々何気なく利用しているメトロです。
改札など有りませんからたとえ切符無しで乗車してもコントロールチェックに
さえぶつからなければ咎められない。 でもチェックにぶつかれば罰金です。
結局高くつのでバガバガしい…となります。
罰金と言えば、車の駐車も自己申告スタイルです。
デンマークではどの車にもフロントガラスの隅に丸い時計のようなものが
ペタン!と張られています。パーキングディスクと呼ばれている、
言わば車取り付け型パーキングメーターです。駐車を開始した時間に針
(時計ではないので1本しか無い)を合わせます。うっかり合わせるのを
忘れて、いい加減な時間帯になっていたりすると罰金になることもあるので、
要注意なのです。
市街地に駐車する際はパーキングメーターの無い所でも必ず「自己申告」が
必要なので、このディスクは車を持つ人の言わば必需品。デンマークでは
立派なプレゼントアイテムになっていて、ジョージジャンセン社製のだって
有るくらいです。

こうして書いていると、この国は自己申告が常識みたいな気もしてきました。
人件費が高いということも手伝って、合理主義と個人主義の良い部分が
このシステムをスムーズにしている大きな要因だと思います。

税金等のいわゆる青色申告もネット上で割合簡単にできます。基本的には
やはりIDカードで国民のデーターがしっかりと管理できていることが大きいと
思います。万が一急病で倒れてもこのカードさえ有れば安心だし、
オンライン化が細部にまで行き渡っているので、教育や医療の現場の手続きが
本当に簡単です。
アナログ人間の私も遅れないように何とかシステムについて行こうと、まずは
ようやくの事、ネットバンクに登録した所です。

岡村 恭子
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鳩も木の枝で日向ボッコ…。気持ち良さそうです。





春の陽射しが室内にも差し込んできます。

【きょうのクロスステッチ Vol. 130】 by 岡村恭子


VOL.130 春の『ペンキ塗り日和』

torsdag den. 15 marts 2012

このところ毎日良いお天気に恵まれ、例年より早めの春本番となりました。
庭の草花達も高速度フィルムを見るように刻一刻と成長し、ニョキニョキ、
スクスク…。そんな音まで聞こえて来そうです。

毎年この季節になると私はわけも無く焦ります。
北欧の春というのは細胞が冬眠から目覚めたように俄に活性化して、
とにかくジッとしていられない気分になります。
リンゴの枝の剪定もしたいし、裏庭の薮もなんとかしなければ…でも
その前にペンキ塗りもしたいし…と、庭と家の内外、あれもこれも、と
頭の中は山盛り状態。片っ端から片付けて行きたい衝動に駆られます。
しかし、さすがにペンキ塗りは一人では無理なので、家人のヤル気が
出た時が我が家の『ペンキ塗り日和』、彼が刷毛を手にしてくれたら
シメタものです。その気の変わらぬ内にその他の事は全て返上で
ペンキ塗りデーとなります。
先週末の朝でした。家人が地下室からペンキの道具一式とハシゴを運び
出して、どうやらやる気満々のようです。私もこの時とばかり庭ほうきを
刷毛に持ち替えて、さあ、数年ぶりに我が家のペンキ塗りスタートです。

今回は玄関ホールです。ホールだなんて大げさな呼び名だと思いますが、
我が家には畳4枚程のレンガ敷きの“ 玄関 “ の隣に、ちょっと面白い空間が
広がっているのです。大理石の床、天井まで続く大きな窓、突き当たりの壁には
暖炉がはめ込まれている。部屋というには細長くて半端なスペースです。
この家に暮らし始めた頃から用途不明のまま、いつの頃からか “ 玄関ホール “と
言うようになり今日に至っています。説明が長くなってしまいましたが、
その “ 玄関ホール “ のペンキ塗りです。

人件費の高いデンマークでは室内のペンキ塗りはDIYが常識です。
商店街には必ずペンキ屋さんが店を開いています。通りの向かい合わせで
店開きしている事もありますが、それでも商売が成り立つ。それくらい
みんなペンキ塗りをします。( 賃貸アパートは引き払う際にペンキを塗って
きれいにする義務がありますから、この国の人はみんな慣れたものです。)
さて、今回は珍しく娘も参加してリクレーション気分です。
ペンキ塗りは下仕事が肝心です。あらかじめ壁を掃除した後、はみ出し防止の
テーピングをし、床や家具にはビニールカバーをします。こういう下仕事さえ
しっかりしておけば後は楽しい作業です。刷毛を手に好きな所から攻めて行きます。
スーッと白いペンキを塗った時の気持ち良いこと。
最後のひと塗りが終わった時には一種爽快な達成感です。
玄関ホールが軽やかにリフレッシュしました。
その翌日は用事もないのにホールを覗きに行ってばかりいました。


岡村 恭子
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柔らかい春の陽射しの中で早春の花も気持ち良さそうです。






今回のペンキ塗り before & after。

【きょうのクロスステッチ Vol. 129】 by 岡村恭子


VOL.129 前向きにクロスステッチ

torsdag den. 8 marts 2012

大震災から一年が過ぎようとしています。
皆がそれぞれの立場で様々な思いを胸に過ごして来たこの一年ですが、
これからは、前向きに明るい暮らしを思考して行く事が復興への近道では
ないかと思います。
5月に東京で開催されるステッチハウスのイベントお知らせを見て、
仙台Vi sesさんの作品展のタイトルに心惹かれました。
『花糸で描く~ひと針からの復興~』展。
ひと針ずつ思いを込めて作品作りに励まれている皆さまにエールを送ります。

早春は三寒四温。重ね着したセーターを脱いだり着たりしながら
私は春を迎えるための庭仕事を続行中です。
落ち葉の下からムスカリやチューリップが発芽し始めています。
土の中で小さな生き物達が外の様子を伺っているような気がします。
「春」の下に「虫」が二匹で「うごめく」=『蠢く』
辞書にはムクムクと少しずつ動き出す様、とあります。
春になって虫達が動き出す様子を実に上手く表現したものだと感心します。

デンマークで生まれ育った娘は学校から帰るとキッチンのベンチに陣取り、
おやつ片手に父親手作りの漢字ドリルに挑戦するのが日課でした。
お友達とバイバイした途端にデンマーク語の世界から日本語の世界です。
大変かな?と思っていましたが、彼女にとって漢字の練習はクイズやパズルの
ような楽しさが有ったようです。
にんべん、さんずい、くさかんむり、など部位だけで文字の意味を推測でき、
時にはひとつの文字がそのモノの姿カタチを表現していることもある。
「魚」という文字は確かにサカナに似ています。彼女の頭の中では文字が
サカナになって泳ぎ出したりしていたのでしょう。
「ツクリ」や「ヘン」などを正しく組み合わせ、文字を完成させるのはちょっぴり
レゴと同じ感覚かな?と思いますが、どうでしょう? いずれにしても
何事も楽しみながら習得する事が一番の早道に違い有りません。

デンマークの人に当用漢字だけで1800文字以上有ると言っても俄には信じて
もらえません。その上、平仮名を組み合わせて音読み訓読みを使い分けると
言ったら理解の範囲を超えてしまいます。それを日常何気なく使いこなしている
私達はかなり “ スゴイ!” のですが、デンマーク語は日本語と違う意味でややこしい。
この難解な2カ国語の狭間で30年、未だにデンマーク語を使用する際には辞書と
にらめっこです。

今回の写真は文字のお話に相応しいブラックダイアモンド=王立図書館です。
デンマークの最大の規模を誇る図書館は 早春の抜けるような青空の下、
運河をバックに硬質な輝きを反射させていました。

岡村 恭子
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運河に乗り出す様に建つブラックダイアモンド。

ガラス張りの明るい館内。



女王陛下御在位40周年を記念してイラストが展示されていました。
ヘビースモーカーの女王様とご主人にお小言の女王様。ダニッシュユーモア!

【きょうのクロスステッチ Vol. 128】 by 岡村恭子


VOL.128 庭仕事スタート!

torsdag den. 1 marts 2012

弥生三月ひな祭りの頃となりました。
デンマークは名残り雪の東京より一足お先に春を迎えた様子です。
強い風の日が数日続いた後、気圧配置が春に変わった…そんな
感じのする穏やかで暖かいお天気です。
カーテン越しの朝日の何と明るい事でしょう。
早朝からさえずる小鳥達に目覚めも爽やかです。
いつもは待ちぼうけの北欧の春、今年はとても早く来てくれました。
結局この冬は氷点下の真冬日が数える程、雪らしい雪も降らなかったので
せっかく買い貯めした道路に撒く塩(VOL.115)も使わずじまいです。
次の冬が来るまで地下室で眠っていてもらいましょう。

暖かいお天気に答える様に、我が家の庭にも早春の花が咲き始めています。
エランティス、スノウドロップ、クロッカス。黄色、 白、 むらさき色の
小さな花があちらこちらから顔を出し可愛らしいこと。これから日増しに
成長する草花達のためにも、さあ!今年も春の庭仕事スタートです。

冬の間放置していた庭は、木枯らしで折れた木の枝や松葉に混ざって、
何処から飛んで来たのか?大晦日の花火の燃えかす、はたまた薮の中には
ビールの空き缶やお菓子の袋など、余り嬉しくないゴミも見え隠れ
しています。ポイ捨てする心無い人は何処にもいるものですね。
我が家は角地に立っている上、大通りに面して長いレンガ塀だから
面白半分に放り込むのでしょう。本当に困りものですが、文句を言っても
始まらない。軍手をはめて大掃除開始です。
誰にもひとつくらい取り柄が有るもので、繊細さが要求される刺繍は
苦手なワタクシですが、大雑把な片付けごとは得意です。
監督になった気分で腕組みして、 さて、どの辺りから攻めようか?
当たりを付けると “ はい、スタート!”
本日は芝生の掃除とプラムの木の下周辺の整地です。植物は実に逞しく、
プラムの老木の根元にヒイラギや花の咲かない刺ばかり立派なバラが根を
張っています。どちらもうっかり触るとチクチク痛いので気になっていました。
大きなシャベルを足で思い切り土深く差し込んで、グイッと根っこごと取れた時は 
ああ、スッキリ!
余計者がいなくなったプラムの木の根元はお日様も良く当たって気持ち良さそうです。

作業の手を休めて、ふと、桜の木を見上げると枝先が赤茶色に膨らんで
きています。桜の芽の赤ちゃんです。一年中で一番ワクワクする季節が
もうすぐそこまで来ています。それまで自称『庭の監督さん』は大忙し、
春の庭仕事はまだ始まったばかりです。


岡村 恭子
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冷たい土を割って咲き始めた可憐なエランティスとスノウドロップ。

明るい青空が気持ち良い早春の庭。

桜の木の枝先が赤く膨らんで来ています。

【きょうのクロスステッチ Vol. 127】 by 岡村恭子


VOL.127 家庭の味 B級グルメ

torsdag den. 23 februar 2012

ストックホルムから友達が遊びに来てくれました。数年ぶりの再会です。
彼女は本業の傍ら、アートやデザインを軸にして世界を結びつける
NPO活動をしています。アフリカの民芸をクローズアップして北欧の
ガラス作家とのコラボレーションを企画したりしています。
彼女が現地アフリカの状況を熱く語るのを聞いていると、何もせずに居る
我が身がなんだか恥ずかしくなります。せめて、彼女が我が家に来た時には
美味しいご飯を食べてもらいましょう。何が良いかなあ?… 
いつになく思案しました。と言うのも、今回はお友達と一緒で、おまけに
我が家に来る前日は某有名レストランで食事をすると聞いていたのです。
予約してから2年待ちという” 超 “ がつく人気高級レストランです。
決してグルメではなく好奇心!…そういう所もいかにも彼女らしいの
ですが、さて、そのような一流レストランで食事をした翌日の我が家です。
そのギャップは如何に?
お料理対決番組ならミッシェランレストランVS家庭料理という所です。

結局、その日私が腕によりをかけて用意したのは…とても普通の
でも、真心だけはたーくさん込めて丸めたコロッケ。他にニシンのマリネや
麻婆豆腐などなど、いつもと変わらぬ我が家風お惣菜を料理しながら、
つくづく日本の家庭料理は和洋中折衷のフュージョンスタイル、
応用が利いていると感心します。それに比べると、デンマーク料理は
工夫が足りないね、などと独り言です。
市販されているカレールーやインスタントラーメンの例を挙げるまでもなく、
日本人の味覚と工夫で世界中の食材が進化し続けて来たのですから、
そういう意味では世界に誇る総グルメ国民だと思います。
さて、その夜は揚げたてのコロッケに歓声が上がり、賑やかに食べ且つ飲み、
テーブルを囲んで夜の更けるまでおしゃべりに花が咲きました。
普段忙しくしている彼女達が久しぶりの家庭料理に喜んでくれて本当に良かった!
熱々の揚げたてコロッケ、大正解だったようです。

何も贅沢な材料を使わなくても美味しいご馳走はいくらでも作れます。
例えば、小腹が空いて「ちょっと何か食べたいな」という時、我が家では
「B級グルメ メニュー」が登場します。
家人の得意なのはお好み焼きにソースや焼きそば、デンマークの分厚い葉の
キャベツを丁寧に切って作ります。焼きそばにはスパゲッティーを代用、
我が家では冷やし中華もスパゲティーで作ります。
“ 冷製パスタ シノワーズ “ …なんてね。見方を変えればなかなかお洒落でしょう?
無理せず、身の丈に合った食材の中から “ 美味しい!” を発見するのも
毎日の暮らしの楽しみ方だと思います。


岡村 恭子
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我が家風醤油ハンバーガー。ビーフ100%のひき肉を丸めて叩いて塩胡椒。
バターたっぷりで炒めたオニオンと一緒に勢い良く焼いて仕上げにお醤油を
ジュウッ!で完成。

デンマーク名物のホットドック。B級グルメの代表選手です。

Vol.68で紹介したビクスマッド。これも小腹が空いた時に便利な簡単メニューのひとつです。

【きょうのクロスステッチ Vol. 126】 by 岡村恭子


VOL.126 茶話:ノラ猫カナちゃんとバレンタイン

torsdag den. 16 februar 2012

お陽さまが明るくて気持ちよい昼下がり、「 あっ!カナ猫が来た!」…
窓越しに凍り付いた庭を眺めては、どうしているかしら?
ご飯にありついているだろうか?と、毎日のように心配していたので、
日溜まりで丸くなっている姿に一安心、どうやらこの冬も
元気に乗り越えてくれそうです。
厳しい季節をサバイバルしている姿に、なかなかどうして逞しいと
感心しますが、当のカナ猫はやつれた様子も無く、越冬用の毛皮で
フサフサモコモコ…とても暖かそうです。
ミルクを上げると美味しそうに飲み干しました。

14日はバレンタインデーでした。今年も沢山のチョコレートが
行き交ったことでしょう。
それで思い出したことがあります。もう、ひと昔も前のお話です。
帰国して久しぶりに友人の家を訪ねたときの事でした。
当時小学生だった彼女の息子が大きな袋を両手に抱えて「行ってきま~す!」
元気に自転車で出て行く所に出会ったのです。聞けば、バレンタインデーに
女の子からもらったチョコレートのお返しを配リに行く所だというのです。
今で言うホワイトデーのプレゼントですね。
お返しのプレゼントは彼の祖母と一緒に作った手作り小物。
本人はお菓子を買いたかったらしいのですが、それを小耳に挟んだ
お祖母ちゃんが、真心の込もったプレゼントをしたらどうか?と提案した
のだそうです。そして、手芸が趣味のお祖母ちゃんの手ほどきを受けて
サッカー少年が糸と針を手にして頑張った。お祖母ちゃんも孫と一緒の時間を
楽しく過ごし、プレゼントが完成した時には二人とも大満足だったそうです。
3世代仲良く暮らす彼女の家ならではの心温まるエピソードです。
抱えきれない程のお返しプレゼントを配りに出かけた彼は、
なかなかの人気者だったのでしょう。どうやら子供達の世界にも貰った
チョコレートの数だけの悲喜こもごもが有りそうです。
男の子は幼い頃から厳しい競争社会にいるのだと、と少年の後ろ姿を
微笑ましく見送りながら思ったものです。

ところで、今年のバレンタインデー、我が家にもチョコレートが届きました。
毎年必ず送って下さるM-子さんからです。
忘れずにいて下さるだけで本当に嬉しい上に、彼女はプレゼント上手なのです。
ラッピングやカード選びにもいつも彼女らしい工夫が感じられ、
楽しそうにプレゼントを作っている時の姿が目に浮かぶようです。
家人は少々照れながらも、やっぱり嬉しそうです。
何才なっても女の子からの甘いプレゼントは嬉しいに決まっていますね。

岡村 恭子
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近所のお花屋さんで見かけたチューリップで室内に春を呼びます。

今年も届いたM- 子さんからのバレンタインチョコレート。

久しぶりに日向ボッコにやって来たカナ猫ちゃん。

【きょうのクロスステッチ Vol. 125】 by 岡村恭子


VOL.125 皆が利用出来る”身近な福祉”

torsdag den. 9 februar 2012

先週まで家のメンテナンスで工事の人が出入りしていたのですが、
ようやく一段落です。少々痛んでいた箇所を修繕しただけですから、
傍目には何処を直したの?という程度ですが、毎日暮らしている身には、
ずっと気になっていた虫歯を治した時の様にすっきり!
建物に成り代わって?軽やかな気分です。
住宅というのは住み手の気持ちを反映するような気がします。
きれいになったと喜んでいると、家もニッコリ笑ってくれるような気がします。
我が家は築70年以上の言わば “ お年寄り” です。これからも優しく
労ってあげなくてはいけないな、とあらためて思います。

そんな訳で、慌ただしくしている内に一月は過ぎたものの、
北欧の2月はまだ冬の真っ最中、寒いトンネルから抜け出るには
もうしばらくの辛抱我慢です。家のメンテナンスも一段落してしまい、
ちょっぴり退屈な週末、散歩がてら シーズンオフの 美術館に行ってきました。
ハイシーズンは観光客で混雑するスポットも今の時期は静かです。
中でも私のお気に入りはglyptotek美術館(VOL..114参照)です。
ここはいつでも常春状態、おまけに日曜日は無料(特別展は有料)、
地元民の格好の散策コースになっています。大きなヤシの木が生い茂る
エントランスホールには赤いハイビスカスの花が咲き、美術館というよりも
植物園のようです。人々は芸術鑑賞も何処へやら、ベンチに腰掛けて
おしゃべりしたり、池の鯉に喜ぶ子供の姿に目を細めたり、さながら明るい
季節の公園、市民の憩いの場という雰囲気に溢れています。
このglyptotekから徒歩で数分、国会議事堂にほど近い所には国立博物館が
有ります。入り口には館内用のベビーバギーが並び、小さな子供連れでも
安心して見て回れる様配慮されていますし、 子供達の為のワークショップや
イベントが開催され、いつも家族連れで賑わっています。

このように美術館に限らず、デンマークの公共施設は誰でも気軽に利用
出来るように工夫されています。図書館もとても便利です。
ほとんどの図書館は日曜日オープンですし、カフェを併設している図書館では
思い思いにPCを開いたり、新聞を広げたり…静かな環境で誰にも邪魔されず
ゆっくりとした時間を過ごすことが出来ます。
本以外にも映画のレンタルシステムも利用出来ます。何れもインターネットで
在庫状況を確認し、希望リストと利用図書館名を書き込んでおくと図書館側が
手配してくれます。届いたという知らせを受けたら指定図書館に受け取り行く。
オンライン化で蔵書管理を徹底簡略化し、ネットワークを活用して限られた
ストックを上手に回転させているのです。
更に図書館まで足を運べない人や文字の読めない人の為には本の朗読も
ダウンロードして聴けると聞いた時には、さすが福祉先進国だと
感心した次第です。


岡村 恭子
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glyptotekのエントランスホール、大きなガラスドームの中は常春です。

絵画以外にもエジプト、メソポタミアなどの発掘品など充実の内容です。

国立博物館にて。これなら赤ちゃん連れでも安心ですね。


【きょうのクロスステッチ Vol. 124】 by 岡村恭子


VOL.124 本当かな?『地球温暖化』

torsdag den. 2 februar 2012

豪雪に見舞われている地域のみなさまにお見舞い申し上げます。

去年の今頃は我が家も毎日雪かきに追われていたのを思い出します。
溶けてしまうと「一体あの苦労は何だったのだろう?」と思う。
雪というのは見た目の美しさとは裏腹になかなか手のやける厄介ものです。
豪雪地帯の皆さんのご苦労は大変なことと思います。
一日も早く穏やかなお天気になります様に…。

デンマークもシベリアからの寒気にすっぽりと包まれてしまいました。
去年の暮れから続いた暖冬に、春が来た!と早合点した庭の植物達も
一斉に身を潜め、凍えながら様子を伺っているようです。
身を切るような北風は寒いというより “ 冷たい!” という感じですが、
どんなに寒くても自転車で…というのがコペンハーゲンっ子です。
空気が乾燥しているせいか、ペダルを漕いでいるうちに寒さにも慣れて
“ 大丈夫、北風なんかに負けるものか!” という感じです。
張りつめるような空気を深呼吸すると清々しい気持ちにもなります。
そして「ただいまー!」とドアを開けた途端に包まれる温々した暖かさに、
適度な運動で温まった身体が更に気持ち良くほぐれるのを感じます。

デンマークの都市はほぼ100%地域暖房が完備しています。
水道管と同様に張り巡らされた給湯管が各家庭に引き込まれ、80℃前後の
温湯で暖房しています。家全体がゆっくりと対流式で暖められているので、
廊下に出た途端に寒い!という事が有りませんし、例えば外で遊んでいた
子供達が雪まみれで帰って来てもパンパンと叩いてお終い!
衣類も身体もすぐに乾燥します。大抵の場合は、地下に地域暖房の
引き込み室があり、冬の間は洗濯物の乾燥室として活用されています。
(集合住宅も同様です。)我が家も例外ではありません。
Gパンなど厚手のものも翌日にはパリッと乾くので乾燥機も不要です。
暖房を使わない夏の雨降りの方がかえって始末に悪く、半乾きの洗濯物の
山を前にして、日本の梅雨時に活躍する除湿器が欲しい!と無い物ねだりを
しています。
北欧を旅行されると、洗濯物を干している光景が見当たらない、と
不思議に思われるかも知れませんが、種を明かせばそんな訳けなのです。
給湯管の通り道は土の温度が他よりも少し高いので、早春の花達もちょっぴり
早咲きだったり、雪がその上だけ早く溶けたりするのでわかります。

さて、今週末は『立春』…ということで春らしくカラフルで美味しそうな街の
ケーキ屋さんの写真を選んでみました。
日本のパティシエが作る洗練されたケーキとは対照的に糖分たっぷり!
素朴な北欧のケーキも、なかなか捨てがたい魅力です。


岡村 恭子
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コペンハーゲンで一番古いケーキ専門店La Glace。







デンマークではパン屋さんがケーキ屋さんも兼ねているのが普通です。



【きょうのクロスステッチ Vol. 123】 by 岡村恭子


VOL.123 寒の戻りのコペンハーゲン

torsdag den. 26 januar 2012

真新しいカレンダーの一枚目も、瞬く間に最後の週末になりました。
冬至の頃に比べると日照時間が一時間以上も長くなり、キッチンに
差し込む朝の陽光も明るく感じられるようになりました。
お天気の良い日には小鳥達のさえずりも聞こえ始めています。
春を待ちこがれる気持ちがふつふつとわき上がって来て、
ほんの小さな兆しにも心ときめきます。
実際にはまだまだ遠い春…なのに、気持ちだけはひと足早く
明るい季節を迎える準備に入ろうとしています。

そんな矢先の今頃になって、あらら…気温が急降下。
一気に日中でも氷点下の真冬日となってしまいました。
いつもなら寒い寒いと文句を言う所ですが、クリスマス前から続いていた
異常暖冬から、ようやく本来の ” 北欧らしい冬 “ に戻ったわけですから、
そう思えば、外に出た途端に凍り付いてしまいそうな冷たい大気も、
身が引き締まるようでかえって気持ち良く感じられます。
庭もフローズンです。芝生を踏むとパリパリ音を立てます。植物達も
突然の寒波に面食らっているだろうなあ…でも、この時期に害虫の卵が
自然駆除されるのですから、厳しい寒さをサバイバルする事は必要不可欠、
草木が元気に育つ為にも大いに意味が有るのです。

以前にも書きましたが、北欧に暮らしていると四季の移り変わりを
気温よりも日照時間で感じます。どんなに寒くてもこれから明るい季節に
向かって行くのだと思っただけで元気になれるのです。
寒波襲来の直前の先週末は街角のお花屋さんも少し早い春を求める人で
賑わいを見せ始めていました。今なら早咲きのチューリップです。
堆く盛り上げられた色とりどりのチューリップはヨーロッパの早春を彩るのに
相応しい花の代表格といえそうです。そう言えば、私は日本から来た友人に
観光スポットを聞かれる度に、『街角のお花屋さん』と答えています。
大抵の広場にはカフェとお花屋さんが有りますから、ショッピングの合間に
カフェで一休みしながら、季節の花で彩られた店先を眺めているだけでも
楽しく見飽きません。

昨日は我が家にもそんな街のお花屋さんから早春のブーケがやってきました。
薔薇やガーベラでおめかしのちょっぴり豪華なブーケと、紅白のかわいい
チューリップの花束です。
記念日には花を贈る、というデンマークの麗しい生活習慣が我が家でもすっかり
定着しました。家族の間でも気軽に花束をプレゼントし合う。
とても喜ばしい事だと思っています。


岡村 恭子
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街角のお花屋さんです。
氷点下の真冬日にはテントを張ってストーブ焚いてお店番です。




結婚記念日に娘が紅白のチューリップのブーケをプレゼントしてくれました。


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アンティーク&ヴィンテージ

スウェーデンより北欧ヴィンテージ雑貨を扱うショップのご紹介。ジュエリー、テキスタイル、手芸中古書もあり。センスの良さは抜群です。秋田市に実店舗もあります。
http://www.antique-vintage.net

<姉妹店 マリリア>

ジョージ・ジェンセン、トロールビーズ、ロイヤルコペンハーゲンをはじめシンプルで感性の高い北欧デザインをご紹介しています。www.mariliadk.com

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