2009年7月~9月

【きょうのクロスステッチ Vol.9】 by 岡村恭子

VOL.9 お花水(すい)

ここ2~3日、気温が急上昇しています。
北欧の夏は瞬間湯沸かし器みたいです。ある日突然のように
真夏日になります。暑さ対策がほとんど手抜き、というよりも、
考えられていない、もちろんクーラーなど無い北欧の生活環境では、
かなり暑く感じますが、なにしろ湯沸かし器ですから、冷めるのも早い。
あっという間にまた肌寒くなるのです。さあ、この暑い日を楽しもう!
と思っても、そうはなかなか問屋が卸してくれません。
7月に入る前に垣根の刈り込みをすること。これは垣根を持つ
住人達の暗黙の条件なのです。ご近所でも刈り込みをしている様子です。
我が家も涼しい内に、と午前中から張り切って作業を開始しました。
もう一人の我が家の住人が電動機で気持良さそうに刈り込んで行きます。
私は後片付けです。すっかりきれいに床屋さんをしてもらった垣根を
眺めて大満足、午後はゆっくり出来るかな?と思っていたら、
電動機を手にした彼は楽しくなってしまったのか、庭中の刈り込み可能な
箇所に着手してしまったのでした。

夕食後、ようやく庭で夕涼みです。
ラベンダー、バラ、ジャスミンなどが次々に咲いて、とても
良い香りがします。ラベンダーの蕾をヒモで括ってプラムの
小枝に下げました。風通しの良い所で乾燥させると、即席のポプリ完成です。
そう言えば、バラやジャスミンはお茶にしますね。今頃だと、他にも…
そう、野原に咲いて甘い香りを放っているカモミールもお茶にする。
もう一つ、花から作るとても美味しい飲み物があります。
Hylde Blomsterという夏に咲く白い花から作るのですが、
どこにでも簡単に育つ一般的な潅木で、庭先や公園の片隅などでごく
普通に見かけられます。
この木に咲く白い花を砂糖水に浸して作るお水が美味しい。
お花のジュース、と言うよりも「お花水」という言葉が相応しいような
気がします。実際「Saft」(サフト)と言って、ジュースと区別している
ようです。そこはかとない優しい香りと甘味で、暑気を和らげてくれます。
デンマークではとても一般的ですが、私は、お花で作るジュースなど
初耳でしたから、とても新鮮で、初めて口にした時には
目の覚める思いがしたものです。
今では我が家の冷蔵庫にはいつもこの「お花水(すい)」が入っています。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com

Hylde BlomsterSaft のいろいろです。
英語でelder =”はいかずら”系の木とありました。

様々なバラの中から。これは石鹸のような良い香りです。

ジャスミン、その後ろはカプリフォリ、どちらも良い香り。



  • 2011.03.24
  • 05:02

【きょうのクロスステッチ Vol.10】 by 岡村恭子

VOL.10 フルーツ暦

このところ真夏日が続き、少し動いただけでも汗ばむ程です。
こんな時にはスイカが美味しい。というわけで、最近の私は
夕食の献立を考えながら出かけたのに、自転車のカゴに
大きなスイカだけ、ゴロリと乗せて帰って来る日が続きました。
スイカを買った時というのは、中身を見るまでどうにも落ち着きません。
赤いかしら?甘いかしら?と心が騒ぎます。さあ、急いで帰ろう!
開け放した裏木戸からキッチンに直行です。
まな板の上にのせて、神様に祈る気持でスパッと真っ二つ。
おお~、赤くて美味しそうです。「おやつよー!」。
庭にいる家族に声をかけたら、いつもは気の無い返事の
娘も飛んで来ました。
スイカの匂いは何だか遠い昔の夏休みを思い出させてくれます。
縁側、海水浴、夏祭り、浴衣に線香花火…。あの頃の匂いや情景まで
鮮やかに蘇ります。まだまだ連想ゲームが出来てしまいそうなくらい、
こんなに夏の思い出と一緒の果物を私は他に知りません

ところで、
日照りで咽がカラカラなのは人間だけでは有りません。我が家の庭も
真夏の太陽の下ですっかり乾燥状態になってしまいました。
芝生はワラのようだし、紫陽花の蕾もしなだれて元気がありません。
ホースで水やりをしても、たちまち蒸発して効果は今一つです。
長雨も困りますが、日照りも困る。ひと雨欲しい所ですが、
一度お天気が崩れたら最後、また夏らしいお天気に戻ってくれるかは
誰にも分らない。そのまま秋になってしまうかも知れない、という
不安が付きまといます。だから…と、言うわけでは無いけれど
植物たちにも、ここはじっと耐えてもらいましょう。

そういえば、昨日は美味しそうなラズベリーを見かけたので
スイカの代わりに自転車のカゴに入れました。
これから少しの間Berry類が果物屋さんの店先を彩ります。
黒ずむほど青いブルーベリーの実を手にとって、
「ケーキを焼こうかしら?」と思い始めるのも毎年今頃の事。
こうして、果物たちと一緒に少しずつ、でも確実に季節も
移り変わって行きます。

この暑さも扉一枚開けた途端に秋風になってしまいそうな
そんな心もとない真夏の一日でした。

岡村 恭子
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観賞用に鉢に株分けしたしたイチゴです。
朝のヨーグルトにトッピング、甘くて美味しい。

これはオランダからやって来たラズベリ?

庭の日当たりの良い所で赤くなってきたRips。

【きょうのクロスステッチ Vol.11】 by 岡村恭子

VOL.11 長い夏休み

デンマークに暮し始めて、最初に感心したことの一つに
“街角ごとのパン屋さん”があります。
どの町にも必ず通りに面したところにパン屋さんがあり、早朝から
職人さんがその店自慢のパンを焼いています。
香ばしい匂いが流れて来る店先で、今朝はどのパンにしようかなあ?
と思案している時などに、ふと「魔女の宅急便」のパン屋さんを
思い浮かべて、私はわけも無く嬉しくてなったりしています。
ところが今朝は勝手が違いました。いつもなら角を曲がると漂って来る
酵母の香りも無く、ショーウインドーは空っぽ!
鍵のかかったドアに大きく手書きで「みなさまもよい夏休みを!」と
はり紙がしてあります。
ああ、そうだった。うっかりしていました。
今月はインダストリアルホリデーでした。

デンマークは毎年7月の第一週末から3週間、全国的な夏休みになります。
インダストリアルホリデーという名が示すようにメーカーの工場が
一斉休業に入ります。もちろん、生鮮食料品や加工食品、酪農業など、
日常に欠かせないモノの生産は通常通りですが、それでも、
そういう企業の人事的な部署はほとんどの人が休暇をとってしまいます。
国の機能が通常の半分くらいに低下してしまう感じです。
近所の個人商店も、冒頭のパン屋さんをはじめ軒なみ夏休みです。
そんなわけなので私の買い物ルートも急性過疎化してしまいます。
テレビのニュースでは避暑地ですっかり寛いでいる首相がなにやら
インタビューに答えていますし、女王さま一家もフランスの別荘でのんびり。
本当に“みんなで夏休み!”なのです。
こうして3週間、国全体が力を抜いてしまうのですから
最初の内はひと事ながら心配になったものです。でも、大丈夫なのだと
いうことが暮してみてよーく分りました。あくせくしてばかりいても
良い結果は望めない。充分休息をとった後に、またエネルギッシュに
一斉スタートする。このメリハリのある社会的ローテーションは
見習っても良いような気がしています。
そんなのんびりした7月のデンマークの中で、唯一、夏休み返上で
大忙しなのが世界中から観光客が訪れるコペンハーゲンの中心地帯です。
旧市街地のカフェやお店はどこも夏休みを楽しむ人々でいっぱいです。

私も今日当たり、そんな人々に紛れて観光気分を味わおうかな…?

岡村 恭子
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紫陽花が見頃を迎えています。

【きょうのクロスステッチ Vol.12】 by 岡村恭子

VOL.12 昆虫コンチェルト

花壇の花の間を小さな白い蝶々が盛んに飛び交っています。
色サイズともに揚羽蝶やモンシロチョウの比較にならない程、
小さくて儚い風情です。北欧は気温が低いため、
昆虫の種類も少ないし、全体的にひそやかに生息しています。
そう言えば、娘が小学校に入ったばかりの頃、自然観察に森に行き、
興奮して帰って来た事がありました。「虫が沢山いた。」と
いうのです。カブト虫でも見つけたのかと思ってよーく聞くと、
小さなてんとう虫や、ゴミのような真ん丸虫など、子供の手の平で
仰向けにされて、パニックになってしまうくらいのミニミニ昆虫
ばかりなのでした。
デンマークの子供達に“カブト虫VSクワガタ”の戦いを見せてやりたい!
怖がるか?それとも喜ぶか?一体どんな反応するでしょうか?
いずれにしてもロボットのように硬質な体躯の昆虫にびっくり仰天
することは間違いありません。

私の子供の頃は、夏休みになると近所の男の子達はみんな
竿の先を松脂でべたべたにしてセミ採りか、アミと虫籠を携えて
トンボ採りに夢中だったものです。
誰でも簡単に捕まえることが出来たということは、それだけ
身近に昆虫が生息したという事です。
昆虫が大嫌いだった私でさえ目を閉じて思い出の『夏休み昆虫採集』の
ページをひもとけば、追い掛ける子供達の姿と一緒に昆虫達の
姿カタチ羽音まで、少しすえたような虫の匂いのようなものまで
明るい陽光の中で輝くようにフラッシュバックして思い出せます。
でも、やっぱり虫は苦手でした。
そんな私が、虫達の姿に愛らしさを発見し出したのは庭いじりのお陰です。
虫達は実に勤勉で真面目で一生懸命だけど、時々バカなのです。
学習能力が欠如しています。その辺にとても愛嬌がある。

ああ、また、こんなところに…仕方ないわね…。
お勝手口を出た所の丁度目の高さの所にクモの巣がかかっています。
もう少しずらして作れば壊さずに済んだのに、ここはダメ。人間様の通り道。
きれいな上出来の巣ですが、箒の先で払ってしまいました。
よやく完成してあとは、獲物がかかるのを待つばかりになったというのに、
ごめんなさいね。次は共存出来る場所に建設するようにお願いよ。
その翌日、やっぱりお勝手口の同じ所に前日のと寸分違わず素敵にきれいな
クモの巣のレースがかけられているでは有りませんか。
本当に、学習しないんだから…困りものです。
箒の先でまたしても払い除けられる運命と相成ったのでした。

岡村 恭子
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デンマークではほとんど見かける事のないトンボが飛んで来ました。
こんな色もめずらしい。豆の花に止まっている所を撮影 by T.O.


夏のおやつはグリーンピース。莢からだしてそのまま食べます。

【きょうのクロスステッチ Vol.13】 by 岡村恭子

VOL.13 我が輩は“ノラ猫カナちゃん”である

ペットを飼っていますか?と聞かれる度に
「いいえ、でも、ノラ猫なら一匹やって来ます。」と答えています。
2年程前のある日の事でした。
いつものように庭仕事をしていて、花に水やりをしようと振り向いた所に
茶色い猫がいたのです。芝生の日溜まりにきちんと前肢を揃えて座り、
私と目が合っても逃げようとしません。それよりも、心持ち小首を傾げて
何か言いたげです。その様子が可愛らしいのでしばらく様子を見ていると、
やおら大きく伸びをして、ゆっくり垣根の向こうへと歩いて行きました。
猫などに興味のなかった私が、この時にかわいらしいなあ、と
思ったのが事の始まりです。
それから数日後、今度は庭で食事をしている時にやってきました。
松の木の根元で、やっぱりきちんとお座りして人間共の様子をそっと
覗いているようです。
その姿が全然厚かましくなくて、それどころかとっても愛らしい。
少し離れた所にボールに入れた水を置いても無視します。それじゃあ、と
試しにミルクを入れたら、恐る恐る近付いて来て美味しそうに飲みました。
面白がった家人が出し汁用の干し魚を投げると玩具のように遊んでから放置。
代わりにソーセージの切れ端を置いてやるときれいに平らげました。
どうも贅沢でノラらしく有りません。何処かで可愛がられている飼い猫かも
知れない、と思っていたのですが、次第に頻繁にやって来るようになり、
気が付けば買い物袋の中にキャットフードが加わるようになっていました。
雌雄不明のまま、のんびりした動作と丸い顔だちに女の子と決めつけて、
カナちゃんと名付けました。今ではすっかり我が家のサブメンバーとなり、
気ままにやって来て、窓辺のテーブルで昼寝をしています。
しばらく姿を見せないと、どうしたのだろう?と心配になりますが、
そんな人間の気持を知ってか知らずか?またフラリとやって来て、
私達をわけも無く安心させてくれます。
こんなに心が通いあっていると言うのに、彼女との物理的距離は未だに
縮まらない。絶対に触らせてくれない!
そうっと頭を撫でようとしただけで、すっと身をかわします。

先日、庭でゴロンゴロン遊んでいるカナちゃんを家人が呼ぶと
蝶々を追い掛けるのを中止してスタスタと小走りにやって来ました。
ほうら、ご馳走だぞー。
今度こそすり寄ってくれるかな?と思ったけれど、甘かった。
やっぱりダメでした。まるで躾けの厳しい両家のお嬢様のようなのです。
猫好きな人に聞いた話では、飼い猫ならば、直ぐに人に懐いて、足下にすり寄って
来るのだそうです。
やっぱり天然のノラ猫なのでしょうか?

岡村 恭子
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ノラ猫に似ず、おっとりとしています。
年令性別不明のまま、カナ猫ちゃんは
我が家にすっかり馴染んでいます。

【きょうのクロスステッチ Vol.14】 by 岡村恭子

VOL.14 遠いけれど近くなったお話

旅行に行く娘が「これで、おしゃべり出来るから」と、我が家のPCに
スカイプをセットアップしてくれました。お陰でこれからは旅先の
彼女とも気軽に連絡しあえます。
どのくらい“気軽”か、と言うと、スカイプ仲間なら世界中どことでも
無料でおしゃべりが出来るというのですから、今迄の国際電話は一体
何だったの?と聞いてみたくなります。
本当に便利な世の中になりました。
“昔は良かった話”の多い中で、コミュニケーションツールに関して
ばかりはアナログ人間の私でさえ“昔より今!”と実感しています。

私がデンマークに来た1980年代前半は、国際電話はわざわざ交換手を
通さなければなりませんでした。料金も驚くほど高いので、なるべく
手早く話を切り上げるよう、砂時計を置いておしゃべりしていたのを
懐かしく思い出します。
『またね、バイバイ、バイバイ…』、受話器を置く時はいつも切なくて、
ほろり、となって…。日本はとても遠かったのです。

それからしばらくして、我が家にテレファックスが登場しました。
はじめの内は、用も無いのにファックスを送っては返事を待ちわび、
受信すると、早く読みたくて電話器の下から出て来る紙(当時はファックス
専用のロールパーパー使用)を引っ張るようにして、ワクワクしました。
でも、なぜでしょう?ファックスには事務的な匂いがあって今一つ親しめず、
何かと言うとやはり電話…というわけで、
便利な大発明と感動していたのも束の間、次第に使う頻度が減り、
最近ではすっかり忘れられた存在となってしまいました。

そして、e-mailの登場です。コンピューターの素晴らしさは、機械なのに
血が通っているようなところです。多分、使い手のデーターがインプットされ、
分身的存在感が有るからでしょう。
手で書いてこそ手紙、わざわざ郵便屋さんが届けてくれるという
プロセスに意味が有るのだと言い張っていた私に、『どちらも楽しいヨ』と
教えてくれたのは、他ならぬコンピューターだったような気がします。
今では毎朝メールチェックが日課になりました。
ロボットなんて嫌いだ、と思っていたけれど、それももしかしたら間違い。
人類にとってもっとも信頼できる“友達”になるかも知れない、と
その辺まで考えが大きく羽ばたいたところで、さてさて、娘がスカイプ上にいます。
きょうのおしゃべり開始です。

岡村 恭子
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海辺の街Dragor。
刺繍のモチーフのような風景が広がっています。

【きょうのクロスステッチ Vol.15】 by 岡村恭子

VOL.15 “煙突掃除”は秋の季語

ポストに「〇日、〇曜日、煙突掃除が伺います。」
と書かれたハガキが入っていました。
暖炉用の煙突掃除のお知らせです。
デンマークでは暖炉の有る個人住宅は毎年一回、シーズン前に
煙突掃除が義務付けられていて、住民税の中にしっかりと「煙突清掃代」
が含まれているのです。煙突掃除のオジサンは大きく括れば市の職員と
いうことになります。そして“衣替え”が夏の季語のように 私の中で
“煙突掃除”は秋の季語となりました。少しずつ冬ごもりの準備が
始まろうとしていると思うと、晩夏の明るい陽射しが更に愛おしく
感じられます。

建築家アルネ ヤコブセンはこの家に大きなオープン暖炉を設えました。
デンマークの多くの個人住宅には今でも暖炉がありますが、
大抵はきちんと扉がついたストーブ型です。この方が安全だし、
熱効率も良く、煤が室内に充満する心配も無く、燃やしたまま安心して
眠れる…と、良い事ずくめです。一方、我が家の暖炉は大きな口を
開けたままですから、面白いくらい良く燃える、燃え過ぎてどんどん
薪をくべなければならない。一度焚いたら最後、とても忙しい。
火付け時に失敗して、部屋中に煙が逆流、充満した煙を追い出すために、
窓を大きく開け放ち、寒さに震え上がった事だって一度ではありません。
扉が無いので火種が残っていると心配で、徹夜で火の用心、と
いう風に笑い話にもならないようなエピソードが沢山有ります。
果たして建築家ヤコブセンは暖炉設計に際して使用時を考慮したか?
それともデザイン優先にしたか?という質問が有れば、住民の私が
即答出来ます。とにかく、そんな風ですから実に世話の焼ける暖炉なの
ですが、それでも、やっぱり暗く寒い季節になると暖炉を囲むひとときは
大きな楽しみのひとつです。

一年ぶりにやって来た煙突掃除屋さんと挨拶を交わしながら、
今年も、もうそんな季節になったのか、と庭をあらためて眺めれば、
桜の葉がわずかに黄色味を帯び、知らぬ間に紫陽花も色褪せてきました。
代わりにシュウメイ菊が今を盛りに咲き乱れ、微風に花頭を揺らしています。
リンゴも大きくなって来ました。
植物は敏感に季節の変化を感じ取り、まだまだ夏だ…と思っている人間たちに
シグナルを送り始めます。
でも、暖炉が恋しくなるまでには、もう少し時間的猶予がありそうです。
今しばらくは夏の名残りの日溜まりで、ゆっくり本など広げて過ごしたい…。
そう思っていたのに。
嗚呼、なぜかノコギリを持ち出して薪作りが始まってしまったのでした。

岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com

シュウメイ菊。
一つの花びらに何匹ものハチが沢山飛び交っています。

赤く色付いたら、ケーキを焼きます。ジャムを作ります。

松ぼっくりを暖炉に放り込むと爆ぜて良く燃えます。

【きょうのクロスステッチ Vol.16】 by 岡村恭子

VOL.16 今夜のお献立ヒント

「今夜のおかずは何にしよう?」
毎日の献立を考えるのも、こう長年繰り返しているとあまりにも日常化して
しまい、おろそかになりがちです。朝、仕事に出かける背中に向かって
冒頭の質問をした時に、即答を得られたらしめたものですが、
何でもかまわない、というようなはなはだ無責任な返答が帰って来た時に
限って、当方もアイデア不足だったりするものです。気がつかない内に
バリエーションに片寄りが出て、同じような献立を繰り返していたり、
時間が無いのを理由に手抜きしてしまったり…そういう日は作り手の情熱不足が
食卓に反映してしまい、テーブルを囲んだ面々も今ひとつ盛り上がりません。
食事はその人の人格形成にも影響するとものの本にも書いてありましたっけ。
ただお腹いっぱいになれば良いというのではない。はい、わかっています。
美味しくご飯を頂くことはとても大切なことなのです。はい、ごもっとも。
がんばります!

私のモットーは手近な材料を使って美味しいご飯を作ることです。
近所のスーパーマーケットで手に入るものを生かしてご馳走を作る。
限られたマテリアルを駆使して家族が喜びそうなメニューを
生み出すのが主婦たる私の腕の見せ所でもあります。
精肉は皮付き、骨付きが中心ですし、魚介類に至っては種類の少なさに
涙が出ますが、素晴らしい事にはEU諸国内の流通の自由化に伴い、
新鮮な野菜果物類がとても豊富な上、手軽な値段で買えるのです。
イタリアのトマト、スペイン産メロン、フランスのリンゴにオランダの胡瓜、
おっと、その横にお膝元デンマーク産の胡瓜が並んでいますよ。
こういう時には絶対的に地元贔屓になります。…という具合にどの品にも
産出国名が明記してあるので選ぶ楽しみもあります。
春に出回るホワイトアスパラガスや、真夏のカリフラワーなども、
いかにもヨーロッパの田舎風だなあ、と私はいつも思っています。

デンマーク料理はお肉の固まりか黒パンのオープンサンドイッチと
相場が決まっているように思われがちですが、普段の食卓に登場する
手軽で美味しいお料理が沢山あります。そんな中から一つご紹介します。
15分で出来ます。
今夜あたりデンマーク料理などいかがでしょう?

*****************************
【 豚バラブロック塩焼き、パセリソース添え】

材料(2人前)豚バラブロックスライス 400g
       粗塩          適宜
       バター         40g
       小麦粉         大さじ2~3
       ミルク          150cc
 水            適宜
       固形ブイヨン     1コ
       塩コショウ       適宜
       刻みパセリ       適宜
作り方
1) ホワイトソースを作る。(ご自分のレシピでもOKです。)
2) 小鍋にバターをいれ火にかけ、溶けたら小麦粉を振り入れて撹拌、
  ミルクを徐々に加え、ダマがないようなら水を加えて好みの濃度にする。
3) ブイヨン、塩コショウで味を整える。
4) 火から下ろしてから刻みパセリを加える。
5) 熱したフライパンに粗塩を振った肉を焼く。(油は肉から出るので不要)
6) こんがり焦げ目がつくまで焼く。皿に移しソースをかける。
7) 季節の温野菜を添える。
*******************************   

岡村 恭子
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このようにスライスしたのを売っています。皮付きです。
実はこの皮の焦げ部分が一番美味しい。

ジャガ芋とビールが良く合います。

【きょうのクロスステッチ Vol.17】 by 岡村恭子

VOL.17 身近なところから地球を救え!?

某日、はるばる日本から遊びに来た女友達が、私が冷蔵庫から取り出した卵の
容器を見て言いました。「とてもエコロジー!」因にデンマークの卵容器は
昔も今も変わらぬ再生紙製です。そう言えば、私も初めて手にした時に何と
優しいのだろうと感心しました。当時はエコロジーと言う言葉も日常化していず、
私は単に“卵に優しい”と感じたのですが、かの友人は“環境に優しい”と
感動した…。時代は変わり、そして、時代を越えてデンマークの卵容器は
エコロジーを提唱してきたと言えそうです。
折しも今年、12月には国際環境会議がコペンハーゲンで開催されます。
身近なところから環境を守る方法を模索するチャンスかも知れません。

地球の温暖化を防ぐという大きなテーマも、日常生活という身近な範囲で
考えれば、何か方法がありそうです。
例えば、そうですね。節電なら私にも出来そうです。政府も奨励している
*省エネ電球に変えるだけで、照明消費電力を約1/3も節約出来るとか。
(*従来の照明用白熱電球を電球型の蛍光灯に変換するというもの)
我が家も電球が切れるそばから省エネ電球に替えて来たのですが、浴室は
特殊なタイプで省エネ電球に変更出来ません。それならば、明るい内に
入浴すれば良い。朝湯が大好きだったオハラショウスケさんは省エネ実践者?
私もさっそく午後のシャワーを楽しみました。
天窓からの自然光が気持の良いこと。おまけに昼間から石鹸の香りに包まれて
ちょっとエグゼクティブな気分も味わえます。
しかし、それも束の間、夕食の準備をしてお肉を焼いた途端にお料理の
匂いにまみれてしまい、結局、就寝前に入浴し直し、節電どころか
節水にもなりませんでした。
考え過ぎて慣れないことをするのはどうも逆効果のようです。

毎日の暮らしの中で環境を考える時に避けて通れないのがゴミ問題です。
コペンハーゲン市の分別ゴミは大きく分けて5種類。一般家庭ゴミ、再生紙、
庭のプラントゴミ、再生ボトル、危険物(ケミカル系、重金属成分を含む
モノ等)です。再生ボトルはスーパーマーケット等に設置されたマシンに返却し、
レシートと引き換えに代金を受け取ります。その他のボトルは街角に
設置された専用コンテナに捨てます。我が家はかなりの頻度で空き瓶を
捨てに行きます。庭のプラントゴミは回収して広大な専用地に寝かせて
肥沃土に蘇らせた後、業者に売却しています。100%リサイクルです。
ルールができるとスムーズにコンテナが適所に設置され、
知らぬ間にその気にさせる…システム作りが上手な国だと感心しつつ、
今日も私は正しい分別ゴミ処理を心掛けていますが、この程度で
地球を救えるのか?はなはだ疑問ではあります。

岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com

再生紙製の卵の容器。
丸みのあるデザインが“卵に優しい”

危険物専用容器。
決まった日に回収車が来て空の容器と交換してくれる。

我が家の3大ゴミ容器。
向かって左から再生紙、普通ゴミ、庭のプラント用。

【きょうのクロスステッチ Vol.18】 by 岡村恭子

VOL.18 コペンハーゲンデザインウィーク:小さな試み

早いもので、もう9月。いつの間にか庭に落ち葉が目立って来ました。
芝生の上にはリンゴも沢山落ちています。
拾わなくては! 拾ってジャムを作らなくては!
それと…花壇の土を掘り起こさなくては! 
掘り起こしてバラの植え替えをしなくては!
ああ、それから来春用のチューリップの球根を埋め込まなくては!
他にも色々とあるけれど、まずは日当たりの良い所に陣取って
…何を書こうかしら?…「今日のクロスステッチ」。

たしか、サクランボが色付く頃のことでした。
仕事から戻った家人がいつになく楽しそうに「おもしろい話があるよ。」と
一冊のリーフレット見せてくれました。それは、8月の終わりに開催される
イベント「コペンハーゲンデザインウィーク」の一環として企画された、
テクニックスクール(技術者養成学校)の在学生と家具デザイナーの
コラボレーションへのお誘いでした。「参加しようと思うんだ。」
普段、そう言ったイベントなどにまったく興味を示さない人が、
今回はやけに前向きです。北欧家具が大好きでデンマークにやって来て、
コペンハーゲンのデザイン学校で学んだ若い頃を思い出したのでしょうか?
それとも、毎年一度開催されてきた「北欧家具フェア」が
時代の変化に勝てず、とうとう中止に追い込まれてしまった、という
ことも手伝っての事でしょうか?否、多分、これからの若者に家具を作る
楽しさを知って欲しいとの強い思いからでしょう。
木工技術を生かせる小品のデザインを提供しました。
制作期限は夏休み前の5週間。一体、どんな出来映えになるか?
私もデザインウィークでの発表を楽しみにしていました。
さっそくオープンの日に会場に行くと、提案した木製の脚立が3脚、
まだ10代の技術学校生2人が頑張った成果となって、
誇らし気に展示されていました。
他にも約20名のデザイナーが協賛したとのこと、なかなかの盛況でした。
ますますグローバリゼーションの加速する中で、北欧家具の伝統である、
クラフトマンシップを継承して行く上でも有意義な試みだったと思います。
制作に携わった学生二人がス脚立をとても気に入り「僕達も使いたい。」と
いってくれたそうです。若者の素直な感想に「デザイナーにとって一番
嬉しい言葉だ」と家人は目を細めていました。

9月1日は彼がコペンハーゲンに現在のデザインスタジオを設立して
36周年目の記念日でした。
これからも今迄と変わらず、デンマークの良質家具デザインを発表して
欲しいと願っています。
http://www.copenhagendesignweek.dk/

岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com

リンゴが赤くなって来ました。
落ち葉掃きに追われる日が近付いて来ています。

制作風景。生徒二人が仕上げの塗装中です。

そして完成したスツール → 完成した脚立

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